CT検査とは

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CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)とは、X線を使って動物の身体を360度全方向から連続撮影し、体の内部構造を断面図や立体画像として映し出す高度な画像診断技術です。
通常のレントゲン検査では確認しづらい部位や、臓器・骨の複雑な構造も明瞭に描出でき、精密な診断や手術計画に欠かせない検査として広く活用されています。

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CT検査でわかること

CT検査では以下のような疾患・異常を的確に把握することができます。

頭部・鼻腔・耳・歯・口腔内: 鼻出血、鼻腔内腫瘍、歯根膿瘍、骨病変など
脊椎・椎間板・神経系: 脊椎・椎間板・神経系:
胸腹部内臓: 肝臓・腎臓・膵臓・副腎・膀胱・前立腺などの腫瘍、消化管異物
骨格・関節: 骨折、骨腫瘍、股関節形成不全、関節の異常
血管の構造や腫瘍の血流: 造影CTにより詳細な評価が可能

とくに腫瘍の局在と広がりの把握、手術の可否判断、再発リスクの予測など、CTが果たす役割は非常に大きく、
飼い主様にとっても治療方針を明確にするための重要な情報となります。

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CT検査の方法

CT検査は、動物が動かずに正確な画像を得る必要があるため、全身麻酔下で行います。検査時間は数分〜10分程度と短時間で、日帰り検査が可能です。

必要に応じて、造影剤を静脈から注射し、腫瘍や血管の走行、炎症の有無をより明瞭に描出します。画像の解析と診断は外部の画像診断医と連携をとり、より正確な診断を行います。

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画像診断医 土岐 美苗 MINAE TOKI

所属

YPC東京動物画像センター センター長

経歴

麻布大学獣医学部獣医学科卒業

2008年 キャミック勤務 (2013年~非常勤)

2015年〜 YPC東京動物整形外科病院 勤務


当院のCT機器について

杉田動物病院では、16列マルチスライスCT装置「Brivo CT385」(GE Healthcare製)を導入しています。この装置の特長は以下の通りです。

  • 0.625mmスライスの高解像度画像による緻密な診断
  • 秒速35mmの高速スキャンで短時間の撮影が可能
  • 被ばく低減技術により、安全性と快適性の両立
  • 撮影後はその場で高精細三次元解析画像を構築し迅速な診断が可能

症例紹介

頭頸部の疾患

鼻や口の中、喉の奥、顎、頬などはレントゲンやエコーでの評価が難しい部位です。
CTを用いることで、病変の正確な位置や性質を把握し、早期の手術や内科治療につなげることができます。

症例1鼻出血で来院した犬(根尖膿瘍)

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鼻出血の原因をCTで調べた結果、鼻腔内に腫瘍は見られず、歯槽膿漏による根尖膿瘍が原因でした。
抜歯と鼻腔洗浄により完治しました。

症例2鼻出血で来院した犬(リンパ腫)

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CT画像では、鼻を覆う骨が腫瘍により破壊されている様子が確認されました。
リンパ腫と診断され、抗がん剤治療で症状が改善しました。

症例3目の下が腫れた犬(骨肉腫)

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頬骨に骨肉腫が確認され、飼い主様の希望で上顎骨切除術を実施。
術後は再発なく経過し、CTによる早期診断が奏功した症例です。

脊髄疾患(椎間板ヘルニア)

MRIが推奨されるケースもありますが、CTでも椎間板の変性や脊髄の圧迫像を捉えることができ、
緊急性の高い麻痺症状の評価に非常に有効です。

症例4後肢麻痺の犬

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CTにより、脊髄を圧迫している椎間板物質を確認。該当部位の骨を削開し、椎間板物質を除去しました。白く見える棒状の構造が脊髄です。

体表腫瘤の手術計画

外から見える大きな腫瘤も、CTで内部構造や周囲臓器との位置関係を確認することで、
安全かつ確実な切除計画を立てることが可能になります。

症例5大型の体表腫瘤

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CT画像により腫瘍の深さや浸潤範囲を確認し、的確な切除ラインを設定。術後は合併症もなく、良好に回復しました

最後に

CT検査は、診断の確実性を高めるだけでなく、治療の方向性を明確にし、動物と飼い主様の負担を軽減するための強力なツールです。
当院では症例に応じて最適な検査と治療をご提案いたしますので、「もしかして」と思ったときはお気軽にご相談ください。